アメリカの閣僚が優秀な本当の理由
明日は日曜だから官僚の俺が独り言を書いてみる
などを読んでいて。
官僚氏、なかなか熱い。
いろいろと理想を持ちながら、そもそも「官僚が国を動かす」ということ自体が間違っていることに気づいて政治志向になっていく様子がよくわかります。この人いずれやめそうだなぁ。
例によってアメリカとの比較がいろいろ出てくるんですが、
ベスト&ブライテストじゃないですが、確かに向こうの政治家には専門家クラスや博士号持ちがウジャウジャしています。
なぜか?
先日アメリカで開催されたAAASの年会に出席された方の報告の中に、ロビイストに関するかなーり面白い話があったのでご紹介します。
あ、ちなみにAAAS(American Association for the Advancement of Science)とは日本の理系が敗北するたった一つのシンプルな理由で書いたアメリカの巨大科学NPO。この記事のためかどうかは分かりませんが、最近AAASに注目する人がちらほら出てきているようでちょっと嬉しいですな。
AAAS年会(ボストン2008)
AAASアワードの授賞式を経て、午後はそのロビイストになるワークショップにも参加してみた。
たぶん将来大統領もねらえそうな貫禄(笑)の若い白人男性がワシントンで科学者がロビイングするというのはどういうことか、という概況を説明した後、別の白人男性が実践ワークショップ(二人とも実際、自然科学系のロビイスト)。
あらゆる分野の科学者が集合する学会というか集会というかお祭りがあることだけでも楽しそうなんですが、その中に「科学者のためのロビイング講座」がある!
長いので引用はしませんが、リンク先に書かれた詳しい内容がまたリアルで実践的でじつに面白いんですよ。
結局、アメリカのリーダー層に多様な専門知が存在するのは、自ら組織的にそこに入り込んでいるからなのです。
そしてそれなりの多様性を保っているのは、その支持団体自体に多様性があるからでしょう。
冒頭の記事の前編で、官僚氏は「これからは国に頼ることはできないから、市場だ」のようなことを語ってますが、それはちょっと飛躍というか、大きな一段階が抜けています。
アメリカは「市場の国」である以前に、極端なまでの「自治の国」なのです。市場はそのための道具の一つだとすらいえます。
トクヴィルの「アメリカン・デモクラシー」にもこうあります。
「アメリカ連邦では、民主的共和国の維持のために、民衆教育が強力に役立っていることには疑問の余地はない・・・・真の啓蒙は主として経験から生まれる。そしてもしアメリカ人が、少しずつ自治を行うことに慣らされていなければ、彼らがもっている文字の上での知識は、今日の自治が成功するのに大して役立つものとはなっていないだろう・・・・・アメリカ人が法律を学習するのは、とくに立法に参加することによってである。彼らが政治の諸々の形を教えられるのは政治を実践することによってである。社会の重要な働きは、彼らが見ているところで日々行われているのであり、いわば彼らの手のうちにあることである。アメリカ連邦では、人々の教育全体は、政治の方向に向けられている。」
アメリカは常に例としては極端なのですが、日本は市場市場という割にかの国のコミュニティによる自治について語られることが少ないように思います。
こちらの記事も参考になります。
アメリカの地方自治
アメリカの地方自治制度に関するにわか勉強でいろんな本を読んでいる中で感心したのは、アメリカは本当に分権化が進んでいることである。大国であるという印象がどうしても大きいアメリカだが、その根底には制度というより文化としての地方自治が根付いている。政府の前に住民自治(コミュニティ)があり、日本の地方自治制度で議論される住民投票(レファレンダム)に関する一般的な問題点など吹き飛ばすような力強さを持っている。
日本で議論される公選職の多選禁止は、法律で規制できるのかということにからめて憲法との関係が議論されるが、アメリカの地方政府における公職の多選禁止については全て住民発議(イニシアティブ)により制度化されており、日本では想像もできない世界である。
まあなんといってもUnited Statesなわけで、国より前に州があり、地方があり、コミュニティがある、ということなのでしょう。
しかも単にムラというだけでなく、相当に「自治スキル」が訓練されている。まあテキサスの田舎ではチェーンソーおじさんに襲われる、という偏見はありますが*1。
AAASにしても、宗教との戦いのために組織された、という見方はあるでしょうが、おそらくこういった組織化・自治化自体、ごく自然な動きなのではないでしょうか。
今後20年、日本で最も重要な概念はおそらく「生きる力」でも「人間力」でもなく、「自治力」になるでしょう。
もちろん地方自治のみならず、医療、教育、情報通信、科学研究などの職業や各社会階層においても同様です。
国を憂える官僚諸氏は国民の自治力を高めるべく奔走せねばならず、その結果官僚の権限自体は縮小することになりますが、それを本望とせねばならないのでしょう。
まったくもって大変な仕事で、頭が下がります。
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