科学的懐疑主義の立場から見たHPVワクチンの副反応の問題ー史上最大なのは薬害か薬害捏造かー

JAPAN SKEPTICS委員で生化学者の平岡厚氏のHPVワクチン副反応問題に関する最新の講演資料を頂きましたので、こちらで公開致します。
現時点での情報を簡潔にまとめられており、状況の概観に適していると思います。

科学的懐疑主義の立場から見たHPVワクチンの副反応の問題 ー史上最大なのは薬害か薬害捏造かー
杏林大学保健学部准教授 平岡 厚
https://drive.google.com/open?id=1aIsxLEK-zp_CZiVWdOd0vK-CP0XzqDSZ

スライドを一部ご紹介します。

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全体を読みたい方は、ぜひ上記リンクからダウンロードしてみてください。

さて、ここからは補足です。資料でも少し触れられていますが、HPVワクチンには副反応に加えて、ウイルスに既感染の場合の問題が浮上しています。

もともと、HPVワクチンは接種時にHPVへの感染暦がある場合には効果がない、とされています。しかし、メルクのデータを再解析した結果、効果がないどころか逆にがんを促進するリスクの可能性が指摘されています。以下の図にあるように、既感染の場合ワクチン接種群で高度異形成リスクが大きくなっているのです。

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http://www.re-check.ch/wordpress/wp-content/uploads/2017/03/2006-VRBPAC_Background_Document-4222B3.pdf

また、別の論文でも、やはり既感染の場合の高度異形成リスクの増大が報告されています。

”HPV DNA- and serology-positive women vaccinated by Gardasil had a higher risk of ≥CIN2 than women given a placebo but the increased ≥CIN2 risk was unexplained.”

Impact of human papillomavirus vaccination on the clinical meaning of cervical screening results. - PubMed - NCBI

Lancetでも既感染時のリスク増加について議論がなされています。こちらでは抗体依存性感染増強の可能性が指摘されていますね。

”the report suggests that vaccination of women with previous HPV 16 or 18 infection might actually increase their risk of high-grade cervical disease—an observation strikingly consistent with reports on the quadrivalent HPV vaccine.”

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61821-3/fulltext

抗体依存性感染増強はデング熱ワクチンで生じた問題で、ワクチン接種が逆に症状を増強してしまう可能性が指摘されています。

デング熱ワクチンの混迷 抗体依存性感染増強 | 日経サイエンス

これらのメカニズムについては今後の研究が待たれますが、HPVワクチンの場合、現在の知識でもそれほど違和感があるものではありません。

平岡氏の資料にもあるように、HPVワクチンは通常のワクチンに比べ、長期間にわたる免疫応答を生じさせるように作製されています。長期間の免疫応答はすなわち慢性的な炎症を生じるわけですが、これはそれ自体をみるとむしろ発がん促進に関わる因子とされています。

【寄稿】慢性炎症・感染症のがん化に関与する遺伝子編集酵素AID | ニュース|Medical Tribune

【いまさら聞けないがんの基礎 2】がんと慢性炎症の関係とは? | Learning at the Bench

しかしながら、HPVワクチンの場合はそれによってウイルスの除去が可能であるということによって、発がん抑制につながると考えられているわけです。

ところが既感染の場合にウイルス除去ができないとなると、これは単に慢性炎症を促進しているだけ、ということになってしまいます。

健康な若者に多数接種することが想定されるワクチンにおいて、逆にがんを促進するかもしれないリスクは副反応とともに重大な問題となるものでしょう。

オーストラリアでは2007年からHPVワクチンが導入されていますが、上のグラフのようにむしろ子宮頸がんは増加し続けています(94年からの減少は検診によるものと考えられます)。予測やシミュレーションでは既感染の場合のリスクは考慮されていません。

Cervical cancer progress falters as screening uptake hits record lows | Cancer Research UK

また上記リンクのCancer Research UKによると、2008年からHPVワクチンを導入している英国ではこの10年で25歳から29歳における子宮頸がんが54%増加している、とのこと。

”the latest data marks a decade-long lack of progress, including a steep (54%) rise in rates among 25- to 29-year-olds”

HPVワクチンは副反応および予防効果について、総合的に再検証が必要なワクチンであるといってよいでしょう。

 

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