科学的懐疑主義者がHPVワクチン副反応問題を徹底的に調査した結果…
「科学的懐疑主義」といえば宇宙物理学者でSF作家のカール・セーガンですね。
セーガンによる科学的懐疑主義とは、
- 裏づけをとれ
- 議論のまな板に載せろ
- 権威主義に陥るな(権威はこれまでも過ちを犯してきた。これからも間違えるだろう)
- 仮説は複数立てよ
- 身びいきするな
などなどといった思考様式で物事にあたり、世の中の様々な問題に対して妥当な答えを探り出していこうとする姿勢のことであるといえます。
自分の頭で考えることができず、権威に対して積極的に異議を唱えようとしなければ、我々は権力を握る者の言いなりになるしかない。(カール・セーガン)
セーガンが特に重視したのは、権威に盲従しない思考を持つこと。その意味で、専門家の権威をもって市民を動かそうとするテクノクラシーとは明確に異なります。もちろん日本でいうところの「ニセ科学批判」とも全然違いますね。セーガンはこんな言葉も引用しています。
市民が誤りに陥らないようにするのは政府の役目ではない。 しかし、政府が誤りに陥らないようにするのは市民の役目である。(ロバート・ジャクソン)
ところで、日本にも科学的懐疑主義を掲げる学会があります。
Home - ジャパンスケプティクス(JAPAN SKEPTICS )
という団体で、1991年から活動しているとのことです。このJAPAN SKEPTICSの委員で生化学者の平岡厚さんは、社会問題になっているHPVワクチン副反応問題について懐疑主義の観点から調査を開始しました。
2014年にはその時点での科学的知見を整理し、
HPVワクチン(子宮頸癌予防ワクチン)の副反応」の問題について−文献調査から見えてくること−
という論文を発表されました。ここではHPVワクチンの副反応問題についてはまだ十分な情報がないものの、慎重を期して勧奨は中止し、より詳細に副反応問題について研究を進めてから判断すべきであるとの結論に至っています。
そして先日、それ以降に蓄積された科学的知見を合わせて論じた続編が発表されました。ただ、前報はJAPAN SKEPTICSのHPで公表されたのですが、今回の続編はなぜかHPでの掲載に反対する方がいたそうで、学会誌のみの公表となりました。
しかし前報がOKで、より情報が増えた続編は駄目だというのはおかしな話。そこで平岡さんが交渉した結果、私がこちらで公表するのは構わないとの許可を得られました。
Googleドライブに平岡さんから頂いた論文pdfをアップいたしますので、以下のリンクから自由に閲覧・ダウンロードして頂ければと思います。
現時点の和文としては、もっとも総括的にHPVワクチン副反応問題を論じたものであるといってよいでしょう。この問題に関心をお持ちの方はまさに必読です。
内容について解説したいところですが、詳細はぜひ本文をお読みいただきたいと思います。
一つだけ明確なのは、懐疑主義の視点から科学的知見を検討した結果、著者はHPVワクチン副反応リスクを認めることになったということです。
それなりの分量がありますが、休日にゆっくり読んで頂きたい力作ですね。
カール・セーガンの精神は市民が権力に対抗するためのものであって、決して市民をコントロールするものではないのです。