子宮頸がんワクチン副反応と、アジュバントによるマクロファージ性筋膜炎について

さて、先日の1月20日、子宮頸がんワクチンの副作用に関して以下のような厚労省の見解が発表されました。

接種後に長引く痛みやしびれなどが報告されている子宮頸がんワクチンについて、厚生労働省の専門部会は20日、副作用の原因や治療法を論議、接種時の痛みをきっかけに、緊張や不安などの心理的要因や生活環境などの社会的要因が、身体の症状として現れたとの見解で一致した。
共同通信

これに対して全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は
「多様な症状に苦しむ被害者の病態と被害実態を正しく把握し検討したものとは到底受け止められません」http://shikyuukeigan.fem.jp/2014/01/120.html
のように抗議声明を出しており、また日本消費者連盟
「そもそもワクチンの副作用ではないかとの疑念を意図的に排除し、副作用かどうか真摯に検討しようとする姿勢が全く感じられない」http://vpoint.jp/education/11042.html
と強く批判しています。

「マクロファージ性筋膜炎(MMF)」の症状と酷似?

ここで特に注目すべきは、実際に30名以上の副作用患者を診察した国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科の佐々木征行医師の見解です。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000033872.pdf
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20131028164258980
佐々木氏は資料においてさまざまな可能性を検討していますが、特に

酸化アルミニウムを含むA型・B型肝炎ワクチンによって起きる可能性がある「マクロファージ性筋膜炎(MMF)」の症状と酷似している

との見解を述べています。
酸化アルミニウムグラクソ・スミスクライン社の子宮頸がんワクチン、サーバリックス薬液に「アジュバント」つまり免疫反応を高めるための物質として添加されています。また配合は違いますが、メルク社の子宮頸がんワクチン、ガーダシルにもやはり含まれています。
ワクチン添付文書
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002c06s-att/2r9852000002c0e2.pdf
この「アジュバント」、実は検討部会でも、信州大学医学部内科学第三講座の池田修一参考人によって言及されています。

池田参考人 ええ。だから、アジュバント関連関節炎とかワクチン接種後関節炎としてはかなり重篤なものが出ているのだなというふうに拝見しました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000014833.html
ところが検討部会の委員らは、アジュバントの影響についてこれっきり完全に沈黙してしまいます。検討部会では薬液の影響ではないとしているようですが、アジュバントは明らかにワクチンの「薬液」です。

「マクロファージ性筋膜炎(MMF)」とはなにか?

では、佐々木氏の指摘した「マクロファージ筋膜炎」とは、どういう症状なのでしょうか。
この症状は英語ではMacrophagic myofasciitis(MMF)と呼ばれています。公式に報告されたのは比較的最近で、1993年にフランスで見つかったのが最初だといわれています。全身または四肢の筋痛、関節痛、発熱、強い疲労感などが特徴的な症状として知られています。生検の結果、筋膜にマクロファージそれに随伴してリンパ球が集積していることがわかり、このように呼ばれるようになりましたが、近年では運動遅滞、成長障害、認知障害、筋緊張低下症など、中枢神経系への影響も報告されています。
Pediatric macrophagic myofasciitis associated with motor delay.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16866298
Long-term follow-up of cognitive dysfunction in patients with aluminum hydroxide-induced macrophagic myofasciitis (MMF)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22099155
マクロファージはいわゆる白血球のひとつで、貪食細胞とも呼ばれます。体に病原体が侵入した際に真っ先にかけつけ、病原体を食べてしまう細胞です。その意味では体を防御する細胞なのですが、近年ではその攻撃能力が自分に向いてしまう場合があることがわかっています。
たとえば脂肪組織、肝臓、膵臓などに侵入して炎症を起こすと、メタボリック・シンドロームや糖尿病になってしまいます。血管内壁を攻撃して動脈硬化を起こしたり、脳に侵入して神経疾患を起こすこともあります。同様に、MMFでは筋膜に侵入して悪さをしている、ということですね。いわゆる諸刃の剣、というやつです。
ではここからは、アジュバントとマクロファージ性筋膜炎の関係を明らかにした論文
Macrophagic myofasciitis lesions assess long-term persistence of vaccine-derived aluminium hydroxide in muscle
Gherardi, et al (2001)
http://brain.oxfordjournals.org/content/124/9/1821.full
をもとに概説しましょう。図や写真は、すべてこちらの論文からの引用になります。
さてこの論文の著者らは、原因不明のMMFの実態を探るべく、1997年から1999年のフランスにおけるMMF患者の調査を始めます。
そこで、ワクチン接種の情報が得られた患者50人について検討すると、全員が水酸化アルミニウムアジュバントを使ったワクチン接種を受けていることがわかりました。年齢は12歳から77歳まで、接種から生検までの期間は3か月から96か月まで。いずれも非常に広範にわたります。

組織の様子は以下のように、やはり筋膜にマクロファージおよびリンパ球が集積していることがわかります。

Aはヘマトキシリン・エオジンという色素での染色。筋外膜(下部の赤いところ)の上に、ぎっしりとマクロファージとリンパ球が浸潤してることがわかります(淡いピンクに青っぽい粒)。BはマクロファージのマーカーCD68で染色(赤)、CはT細胞のマーカーCD3での染色(赤)です。
さらに電子顕微鏡で、組織を詳細にみてみます。それが以下のモノクロの図。

Aでは上下の筋膜の間にごちゃごちゃとマクロファージらが入り込んでいる様子がよりくっきりわかりますが、もっと目を凝らすと、奇妙な構造が見えてきます。それがBで、浸潤したマクロファージの中になにやら黒いカタマリが散見されます。この構造はMMFの患者さんでは調べた40人中40人見つかりましたが、皮膚筋炎および筋ジストロフィーの患者さん80人ではゼロでした。
著者らはここに、ワクチンに使用したアルミニウムとの関連を疑います。
そこで、組織の浸潤マクロファージをX線成分解析にかけます。するとドンピシャ。

Alの高いピークがみえます。やはりマクロファージにはアルミニウムが蓄積していたのです。
核反応解析で組織でみても一目瞭然、

筋細胞の周辺のマクロファージ領域のみ、Al、アルミニウムの集積が認められます。一番下のはP、リンの分布で、これは当然ながら全体にみられます。
マクロファージは血中の鉄をとりこんで蓄積する性質がありますが、同様に他の金属も集積する場合があります。しかしそれがどういう影響を及ぼすのかは、まだよくわかっていないのです。
またこの時、筋肉や血清のアルミニウム濃度を測定してみると…

MMF患者の筋肉ではアルミニウム濃度が大きく上昇していますが、血清では通常値と変化ありません。したがって、血清の測定ではMMFかどうかの判断はできないということになります。
ここまでで、MMFの患者さんでは筋膜にマクロファージが集積しており、そのマクロファージはアルミニウムを蓄積していることが明らかになりました。
じゃあワクチンアジュバントの水酸化アルミニウムでこんなことが起こるの?となるのですが、人体実験するわけにもいきませんので、ラットで実験してみます。
酸化アルミニウムアジュバントを含んだHBVB型肝炎)ワクチンをラットに打つと…

やはりヒトと非常によく似た形で、筋膜へのマクロファージの集積が起こりました。
これらのことから、ワクチンアジュバントの水酸化アルミニウムはマクロファージ性筋膜炎MMFを引き起こし得る、といえるわけです。
くりかえしますが、サーバリックスおよびガーダシルのアジュバントには、水酸化アルミニウムが含有されています。
子宮頸がんワクチン副作用がMMFだけで説明できるかはともかく、この状況でアジュバントの影響を無視するのは、どうみても科学的態度とはいえません。
検討部会は「心身の反応」なる不明確な主張をしているようですが、それこそなんの根拠も示されていません。
佐々木、池田両医師の主張のように、アジュバントおよび水酸化アルミニウムの影響をただちに検討、調査するのが、検討部会のとるべき方向であり、患者の救済および薬害の防止における科学的社会的姿勢だと断言できるでしょう。


追記
以下のように部会資料においてアルミニウムについて触れている部分があります。が、上記の知見からアルミニウムの影響を除外できないことがわかります。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000035213.pdf
1.発症時期は症例によって様々であり、発症後の症状の経過にも一定の傾向がない。
2.子宮頸がん予防ワクチンにはアジュバントとしてアルミニウムが含まれる。しかし、専門家によれば、動物実験の結果からワクチンの筋注による血清中のアルミニウム濃度の増加はわずかであると推定されこと、アルミニウムは急速に体内から排出されることから、アルミニウム中毒によるものとは考えにくいとされた。
3.サーバリックスにはアルミニウム以外のアジュバントが含まれるが、サーバリックスに有意に報告頻度の高い副反応は検出されていない。

反論:
1.→上記論文にあるように、症状の分布はワクチン接種後から非常に長い期間(3〜96か月)にわたる。またMMFだけでなく複数の自己免疫疾患なども報告されている。
2.→上記論文より、血清中のアルミニウムではMMFかどうかの判断はできないことがわかる。筋組織またはマクロファージにおける蓄積を確認する必要がある。また筋膜のマクロファージにおけるアルミニウムの蓄積に関しては通常の代謝経路では判断できない。
3.→上記のように、アルミニウム関与の可能性は排除できていない。ガーダシルと比較しても、ガーダシルにもアルミニウムが含有されており、やはりアルミニウムの関与を排除できない。


ちなみに薬害オンブズパースンにより、グラクソ・スミスクラインの論文に対して以下のような疑義が提出されているようです。
「子宮頸がんワクチン」(HPVワクチン)の費用対効果に関する見解
http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=853

また、ケースレポートではありますが、免疫吸着療法(血中の自己抗体を除去する手法)によてHPVワクチン接種後のacute cerebellar ataxia (ACA) が寛解した例が報告されています。
https://www.thieme-connect.com/DOI/DOI?10.1055/s-0033-1333873

HPVワクチンのエビデンスと費用対効果、副反応に関する疑義についてはこちらが詳しいです。
Tomljenovic & Shawの論文「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン政策とエビデンスに基づく医療−両者は相容れないのか?」
http://tip-online.org/index.php/news/70-news20131108

参考:
予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000035220.html
委員名簿
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000035212.pdf

東京新聞
子宮頸がんワクチン中止訴え、都内で国際シンポ 「アルミが副作用原因」専門家指摘
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014022602000121.html