文字通りのLife Huckかぁ

こちらとか読んで。
マニアックな話をすると、今現在一番ハックしやすい多細胞生物は線虫(C. elegans)ではないかな。
ぶっちゃけ私も学生の頃、「その場でクルクル回転し、熱を与えると緑色の斑点が光りだすC. elegans」、なんてのを作って遊んだことはあります。専門の人間から見ると全然大したことないんですが、フツーの人が見ると驚くでしょうね。
一応は研究の一環でしたし、これらの生物の遺伝子操作は手間もコストも大してかかりませんので、学生の片手間でもなんとかいけます。遺伝学の伝統も長くて知識の蓄積がありますし、ゲノム配列だってネットでフリーで読み放題。遺伝子ノックアウトはRNA干渉を使えば三日で出来るし、遺伝子の導入もうまくやれば一ヶ月もあればいける。ウイルスなんか使いませんし。飼育はちょっとした餌と恒温インキュベータがあればOK。もちろんやればやるほど深いんですが、コスト的な敷居はかなり低いんじゃないかなぁ。もちろん遺伝子操作するならそれなりの整備は必要ですが、そもそも感染性はないし、35度以上で死んでしまうので危険はほとんどありません。
例えば大学の設備を使って、「アフター5・週末の遺伝子操作学」なんてのをやれば面白いかもしれませんね。
線虫じゃあ所詮お遊び?いえいえ、実際、C. elegansの研究からはアポトーシスRNA干渉・マイクロRNAなどメチャ重要な発見が相次いでいます。決してバカにはできませんよ。
まあ問題は、ネットのアプリと違って成果を簡単に共有できないことでしょうか。そこはコンテストでも開いて何らかのハブを作る必要があるでしょうね。
また、生物というものは基本特性として「変化」します。作ったプログラムはひとりでに変化したりしませんが、作った細胞やウイルスは増殖過程で必ず変化します。その点もちゃんとフォローしていく必要があるでしょうね。まあ、C. elegansがいきなり殺人線虫になるのは福田首相プーチンフルボッコするくらいの確率でしょうけど。
しかしまあ、いずれにせよサポートスタッフも含めて今現在のヒトとカネではなかなかね。
アメリカの場合、AAASなどの力もあるし、モノによっちゃ軍のサポートもある。高校生だかが作ったDNA暗号は確か軍のカネが出たんではなかったかな? 合成生物学界隈にもおそらく絡んでるでしょう。
日本ではそうはいかないけれど、いずれにしろどっかからお金を取ってくる算段を付けないと自由ってのは難しい。
回りまわって、特に私らの世代に関しては実用ということを意識せざるをえないんだなぁ。そうでなくては、「基礎科学がいずれは役に立つ」という言説が説得力を失ってしまいますんで。
アメリカには原爆からコンピュータ、バイオまで「基礎科学がやがては国を支えた」成功体験がゴマンとありますが、日本には残念ながらまだこれというものがない。
iPS細胞はその意味でも「負けられない」仕事だというのはよく分かります。ただ、枝葉を切り落としてしまうと幹も死ぬのが生物学。お役人の舵取りは不安ですけどね。
しかし、こんな風にバイオ系の人間がネットにどんどん出てきてくれると面白いよね。できれば教授クラスの人ともガチで対話できればいいのだけれど。