学生やポスドクを政局の犠牲にしないよう民主党にロビイングしよう
政権交代にともなって、自公政権が予定していたさまざまな政策プロジェクトが凍結されたり、変更されたりするようです。
まあ政治は資源分配なのですから、どこかが得をすればどこかが損をする、ということはある程度避けられません。
科学研究ももちろん例外ではないわけで、特に最近ぶち上げられた内閣府主導の総額2,700億円「世界最先端研究支援プログラム」などはその最たるものでしょう。
私個人としては、大型プロジェクトは出口とそこに至る道筋をしっかり検討して欲しいと思っていますので、正直大丈夫かなと感じていましたし、研究業界にもいろいろと異論は聞かれていました。
欧米を見るまでもなく、科学研究もいまや政治的な流れの中にあるものですから、政局から完全に守られるとは思いません。
しかし、議員の皆さんはあまりご存じないと思いますが、科学プロジェクトの下には、それを支える多くの若い大学院生やポスドクたちの生活と人生があるのです。
科学プロジェクトを一切再考するな、とはいいませんが、それを支えている若い人たちの生活や人生についてきちんと考えてやって欲しい。若い人を政治的ないけにえにしないで欲しい。
幸い民主党は、現場からのロビイングを歓迎しているようです。
そこでわたしは以下のような文章をつくり、民主党あてに送付することにしました。
科学研究の未来を心配する皆さまにも、もしよければこれを自由にご利用、アレンジしていただいて、現場からの声として存在を示していただければと思います。
民主主義というのはそもそも一種のアマチュアリズムです。
政治家はあらゆる分野の専門家にはなれませんが、官僚やシンクタンクや現場からのロビイングがそれを補います。
それがうまく機能したとき、中央集権を超える「集合知」が発揮されるわけで、日本が中国と異なるのはその点です。
わたしはその可能性を支持して、ただできることをするだけです。
べつに大仰に構えなくても、メール一本からはじめればよいと思うのです。
民主党御中
衆院選の勝利、おめでとうございます。
貴党の宿願である政権交代が成り、日本もやっと本格的な民主主義国家への歩みを始めたことに私も感慨を抱いております。
自明の理として、多くの政治的プロジェクトに変更が生じることと思います。
科学研究もその例外ではなく、これまでの科学政策の中で批判や異論があった研究プロジェクトが変更されたり、場合によっては凍結されることもあるかと存じます。
これにより、特に大型の予算を得たり失ったりする研究者は悲喜こもごもでしょう。
ただ、研究経験はあまりないだろう議員の皆さまに知っておいていただきたいことがあります。
大物研究者であれば、予算が当たる、外れる、確かに重要なことではありますが、生活が破綻するようなことはありません。
しかし、その下で実質的に研究活動を支える大学院生やポスドク(博士研究員)等の有期雇用研究員にとって、それは文字通りの死活問題です。
大学院生の多くは各種の研究プロジェクトから生活費や留学費用を得ていますし、有期雇用研究員にとって研究費を失うことは失業を意味します。
若い研究者やその卵は、10年近い修行を経て、多くは公務員より低い収入で、毎日残業代ももらわず夜中まで科学研究のために人生と生活をささげています。
改革のためにものごとが変わる、それ自体は仕方がないことだと思います。
しかし、民主党には、未来をになう若い科学者やその卵の人生、生活を壊して欲しくありません。
仮に科学研究プロジェクトの変更があったとしても、大学院生や有期雇用研究員の生活、雇用については最大限の配慮をお願いいたします。
博士課程進学者もすでに減少し始めています。科学研究者がもし政局のたびに職を失うようなことになれば、誰も日本で科学をやろうとは思わなくなるでしょう。
若い人の生活と人生を守ってください。
どうぞよろしくお願いいたします。