「楽器としての声」を操るミュージシャン達

I.「彼女」は楽器なのか?――楽器としての声を好むオタク
ボーカロイドというコンセプト自体は目新しいものではないですが、機能とデザインと時代が合致したのが「初音ミク」なんでしょうね。
私自身は多分手を出さないと思いますが、上記エントリの中の「楽器としての声」という箇所にはアンテナが反応しました。
好きなんですよね〜、「器楽的な声」ってやつが。
もともと人間の声というものは最強の「楽器」ではあるのですが、やっぱりいろいろと限界はあるわけで、それを補う形で「器楽」が発達します。
音程、音色、音域、リズムなど、人間の声を個々には超えた部分を持ち、それでも器楽奏者は人間の声をお手本にしてきました。
ところがそうやって高度に発達した「器楽」を、「声」の中に逆輸入し始めたミュージシャン達がいます。
近代において器楽的なボーカル奏法を確立したのは、やっぱりジャズ。
ジャズ・トランペットの父ルイ・アームストロングは「スキャット」の創始者ともいわれていますが、それをまさに楽器レベルまで高めたのは天才エラ・フィツジェラルド

中盤以降はもうほとんどアドリブとスキャットですな。トランペット顔負けのスピード感と音程。この人のボーカルは本当に古びないなあ。
次、ぐっと現代に引き寄せますと、この人を上げないわけにはいかないかな。
アル・ジャロウ

曲はチック・コリアの”スペイン”。こちらはアドリブというよりはピアノのフレーズを声で完全にコピーしています。それでいながら歌心満載なのだから始末におえない。ジャズを基盤としながらも、あらゆる分野で活躍する怪物シンガーです。
そして「楽器としての声」を極めた男、ボビー・マクファーリン

アヴェ・マリア。旋律ではなく、分散和音を声でやるというのがそもそもおかしい。ここまでいくと逆の意味でのボーカロイドのような気がします。。私はソロ・コンサートのCDを持ってますが、ある意味笑えてきます。
プログレのフィールドで”声”を楽器として最大限に活かしているのはフランスの怪物バンド、MAGMA

MAGMAの聴きどころは素晴らしくグルーブするリズム隊に加え、なんといっても特異なコーラス部隊。彼らは「コバイア語」という音響言語を自作し、マントラに似た歌詞を優れたコーラスワークで展開します。
はてなで「楽器としての声」といえばこの人。
日日ノ日キでお馴染みの吉田アミさん。

ハウリング・ヴォイス炸裂!
これはスゴイな・・。どうやって出してるんでしょう。デビッド・リンチの映画に合いそうな音響です。
初音ミクユーザーの各位におかれましては、この辺りを参考に楽しいボーカロイド生活を送ってくださればと。
ハウリング機能はさすがにないかな・・。