Youtubeで観るジャズ・ピアノの系譜

ただ今の愛聴盤はキース・ジャレットウィーン・コンサート
ケルン・コンサート、パリ・コンサートと並んでキースのソロの傑作ですが、今のところこれが一番私の好みに合っております。ケルンほど甘すぎず、パリほどメランコリックでない。ある意味地味なのですが、聴けば聴くほど旨みが出ます。
そういえば前回のジャズ特集は菊池さんがサックス奏者であることもあって、管楽器に偏った紹介になってしまいました。せっかくなんでこの機会にジャズ・ピアノについても紹介してみようと思います。

プレ・モダンのピアニスト

まずはビッグ・バンドでも有名なピアニスト、カウント・ベイシー

彼のバンドはめちゃくちゃパワフルなんですが、ピアニストとしてのベイシーは実にチャーミング。間を活かして楽しげにスイングします。

モダン・ジャズ・ピアノの源流

そしてなんといっても、バップ・ピアノの祖であり、パーカーと並び称される天才バド・パウエル

いいですねぇ。50年前の演奏にも関わらず、未だにカッコいい。音が古びない。コレがジャズの凄みであり、パウエルの天才であるのでしょう。「パウエル派ピアニスト」と呼ばれる多くの後継者を生みました。
そしてもう一人、奇才セロニアス・モンク

独特の「間」。斬新な和音。アートとしてのジャズを数段レベルアップさせた謎めいたピアニスト。よく見ると既に肘打ちかましてますw
また作曲家としても優れ、後のスタンダードとなる数々の名曲を残しました。

マイルスバンド出身のピアニスト達

ピアニストに関しては、実はこの間のような「歴史観」はうまく当て嵌まりません。
大きな流れはあるものの、個々のミュージシャンそれぞれが和声上の理論というかクセを持っているからです。
そしてここでもやはり、マイルスが登場します。
マイルスバンド出身のピアニストがそれぞれのスタイルを打ち出していくのです。
まずはモード創始者の一人としても知られる知性派、ビル・エヴァンス

名曲、ワルツ・フォー・デビー。クールな中に熱いグルーヴ。豊かな和声、端正なサウンド。パウエルと並んで、後のジャズ・ピアニスト達に巨大な影響を残しました。
マイルスの黄金クインテットを支えた工学部出身の才人、ハービー・ハンコック

新しい物好きで知られ、常に斬新な和音やリズムを取り入れてきました。マイルスから独立してからはファンクへの傾倒したり、ヒップホップをやったり、いろいろ楽しい人です。名脇役というか、誰かのサポートが非常にうまいタイプですね。マイルスで苦労したのかも。
そしてスペイン大好き、チック・コリア

上原ひろみ氏の師としても知られる名ピアニストです。独特のメロディアスな奏法は誰にも真似できません。エレクトリックもやりますが、私はやはりアコースティックが好きですね。そしてスペイン〜民族モノをやるときこそ彼の真価が発揮されます。このデュオはたまらん。。
上でも述べた、現代最高の即興ピアニストといわれるキース・ジャレット

ジャズという枠を超え、ジャレット・ミュージックというほかない領域を築いています。やはり完全即興ソロの「〜コンサート」シリーズが外せません。音楽史上に残る、奇跡的な傑作です。
以上、全員がマイルスバンドに所属していたという事実。「マイルス学校」のあだ名は伊達じゃありませんね。

現代のピアニスト達

そして「今」のジャズピアノ。
まず一押しはブラッド・メルドー

レイディオ・ヘッドのカバーをしたり非常に現代的なセンスであるにも関わらず、クラシカルな耽美性も兼ね備えていて、ピアノファンを魅了します。テクニックも折り紙つき。
さらにオススメなのがこのメデスキ、マーチン&ウッド

ジャズ、ロック、プログレ。もはやジャンルなどは気にしません。カッコいいジャムが出来るか否か。それだけがメデスキの基準です。後半、ピアニカがこれ程イケてる楽器だとは。
そういった感性は上原ひろみにも感じられます。

いいっスねえ。
「考えるな、感じるんだ。」
ジャンルという枠に拘る必要はないけれど、やはり楽譜を超えたこの「肉体性」こそが音楽に生命を吹き込むんでしょうね。
やはりジャズは素晴らしい。