ドイルからイーガンまで〜SFネタのディギュスタシオン

「未来からの銃弾」 「開かずの箱」 「自己消失オートマトン」 「モリアーティ教授」 「フロイト」 「巨大知性体十字軍」 「バールのようなもの」 「八丁堀長屋」

なにをいっているのか、天国でも降ってくるのか、といわれそうなキーワード群ですが、これが11月14日の博士ミーティングでもお話いただく円城塔さんの傑作、「Self-Reference ENGINE」を彩る小道具たちの、それもほんの一部であります。
円城さんといえば、そのペンネームをみてもわかるようにハイブラウなオマージュが散りばめられているのが本読みにとっては最高の隠し味。
同タイトルも、ギブスン&スターリングのDifference Engineから来ているものだと思いますが、筋立てはスチーム・サイバーパンクではなく、時空に関するとある「イベント」をめぐる奇譚の連作仕立てになっています。
知性とは何か、自然法則とは何か、という根源的な問いを中心に、飛び出すのはありとあらゆるネタを巧みに料理したSFフルコースであり、ハードボイルドな乾いた文体にツツイ風味の黒めのユーモアがからみ、ボーイ・ミーツ・ガールから時空の果てまでぶっ飛ぶ疾走、錯綜、狂想のロジック絵巻。
あたかもフラクタル構造のように要約や速読が不可能な本作。ぜひとも日ごろ脳みそに溜まった凡庸なロジックとイメージをガラガラポンするつもりで挑戦してみてください。
もちろん、博士ミーティングに参加される皆さんはマストということで。

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)