穴を掘る仕事と穴を埋める仕事。そして「モモ」。
個別の部門がどんなに効率を上げようと、また努力を重ねて「生産性」を上げようと、全体としては全く効果がない、どころかただ疲弊して後退するのみ、という状況が存在します。
穴掘りチームは穴を掘る。
どんどん深く、どんどん早く。地面にでかい穴を掘ることが彼らの「生産」。
穴埋めチームは埋めていく。
片っ端から土を放り込む。すばやく力強く、平らな地面が彼らの「生産」。
双方、仕事人間。
工夫を凝らし、自分を鍛え、いろんな機械を開発して「生産性」の向上に努めます。
毎日必死に働いている。
仕事の最中は、それなりに充実もしている。
でもしばらくやってきて、状況が前進している気がまるでしない。
努力が足りないのだろうか? もっと必死でやればいいのか?
多分そうなんだろう。
もっと掘らなくては。
もっと埋めなくては。
日本でうまくいっていない部分を見ると、よくこういった構造が透けて見えます。
上げても上げても転がり落ちてくる岩を永遠に運び続けねばならないシジュフォスの神話に似ていますが、違うのはすべて自分達で気づかずにやっていること。
ウヨクとサヨク、勝ち組と負け組、企業と労働者、オトコとオンナ。グローバリズムとナショナリズム。
掘っては埋め、掘っては埋め。
この構造に気づかない限り、いかな努力や効率アップも大した意味を持たないのです。
皮肉なことに、これでも経済はある程度回ってしまう。実質的な富は増えないまま、おカネがぐるぐる動くのです。
しかしそれではミヒャエル・エンデが看破したように、人生をただカネに変えているだけのこと。
社会が疲弊してくるのはコーラを飲んだあとげっぷが出るくらい当然の話なんです。
「モモ」を読むべき時が来たようです。
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
- 作者: ミヒャエル・エンデ,Michael Ende,大島かおり
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1976/09/24
- メディア: 単行本
- 購入: 21人 クリック: 479回
- この商品を含むブログ (252件) を見る