土佐で絵金を見てきたよ

所用で高知県に出向いた折、ちょうど長年の懸案事項であった絵金祭りが開催されていたので是非もなく参加しました。高知市から20キロ、空港近くのひなびた田舎町赤岡にてその祭りは小ぢんまりと始まります。歴史は古く幕末から行われているそうです。
「絵金」てのはどちらかというと知る人ぞ知る、という類のある異端日本画家の通称。私もギャラリーフェイク*1で読んで知ったクチですし、フツーに生活していては触れる機会は少ないでしょう。
こちらの説明によると

絵金こと金蔵は、1812年、高知城下の髪結いの息子として生まれた。幼少の頃より画才に秀でていた彼は、土佐藩の特別の取りはからいによって江戸にのぼった。そして狩野派を学び藩のお抱え絵師の座にまで上り詰め、林洞意と名乗った。しかし、贋作事件の汚名を被り一介の町絵師へと転落を辿る。だが、野に下った絵金は、謎の十年間を経て再び、狩野派仕込みの確かな筆致と豊かな才能を開花させた。それが、闇のなかで異彩を放つこの芝居絵である。飛び散る血しぶき、魑魅魍魎が怪しくうごめく、おどろおどろの世界。絵金が異端と称されるのは、そのゆえんである。

いかにもギャラリーフェイク好みのネタではありますな。とはいえ画力は折り紙つき、それどころかその鮮やかな色彩技法にはいまだ謎の部分も多いとか。
絵金祭りとは主に個人所蔵のそれら真作を年に一度お蔵出しし、祭りとともに蝋燭の灯で鑑賞する催し。これは観ないわけにはいかんでしょう。
まずは撮ってきた絵金を何枚かお見せしましょう。




いやすごいすごい。
まるでGペンで書いたかのようなパワフルな筆致に、赤や緑を大胆に使った鮮やかな色彩感覚。そして荒木飛呂彦ばりの四次元的構図に怪異と血しぶき。褪せない迫力。
それに蝋燭の灯に実に合う。
祭りで歩きながら観るのもいいですが、飲みながらじっくり鑑賞できたらたまらんでしょうなぁ。
題材は多く歌舞伎などから採られているようですが、単に一場面の描写のみならず、ストーリーを一枚の中に凝縮する手法で描かれているとのこと。だから一画面の中にいろいろな時間軸と空間が折り重なり、消失点も複数あったりして、なんとも奇妙な感覚を与えます。
女装美少年が大量虐殺をやらかしていたり、虎眼先生のようなヤバめの老武士が子供同士で斬り合いをさせたり、話もなかなかにぶっ飛んでいます。
でありながら、どこまでもポップなのが絵金のすごいところ。絵の奥の方に小ネタ的なキャラがいたり、シリアスな場面を狂言回しが覗いていたり、遊び心に溢れています。
エログロポップは日本のいわば文化資産ですな。
美術館のガラス越しではなく、リスクを負って蝋燭の灯で魅せる心意気も素晴らしい。
絵金祭り、皆さんも一度は出向いてみてはいかがでしょう。村上隆展よりは確実に面白いと思いますよ〜。
絵金―鮮血の異端絵師