イノベーションは競争の外部よりきたる

「入社時から給与に格差を」経団連会長、フォーラムで

御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、学生を成績や論文で評価し、入社から給料に格差をつける仕組みの導入を提案した。

まあどういう評価基準を使うかは各自で考えればいいんじゃないでしょうか? キャノンさんがそうしたければ「自己責任で」そうすればよろしい。「みんな一緒に」導入する必要もない。
それはわりかしどうでもいいとして、こちらの見解はいただけない。

御手洗会長は、採用の改革について「平等に採用して会社では年功序列。競争の原理からほど遠く、イノベーション(革新)は生まれない。社会正義を平等から公平に変え、それに沿った学校教育、採用試験、給料体系にしないといけない」と呼びかけた。

単に競争すればイノベーションが生まれると思っているオジサンが多くて困りますね。ドラッカー、ちゃんと読んでる?
そもそも、競争というのはなんらかのルールに従って勝敗を競うこと。
コレに対してイノベーションは既存のルールを超えるところから始まります。競争の外部や、外部に向かう動きの中から生まれるのです。
生物進化においても、新しい種は主に「周縁」から生まれるといわれています。「中心」における苛烈な競争と最適化の中では、異端の芽はすぐさま潰されてしまう。
「周縁」や「外部」は「中心」があってこそ存在するもの。その意味において確かに競争は必要であるといえます。
ただし、それは「周縁」や「外部」を許容する程度のものでなくてはならない。乗り越えられるべき存在としての「競争」。
「外部」を許さない競争、抜ければ即「死」を意味するようなバトルロワイヤルは過剰適応を量産し、多様性を摘み、イノベーションを殺します。
「フロンティア精神」という言葉があります。フロンティアとは「辺境」。それは周縁であり、外部と向き合わざるをえない場所です。
今の日本は本当に「外部」や「周縁」の存在を許しているか? それらとちゃんと向き合っているか?
それが今後の「イノベーション」の成否を決めるといっていいのではないかと思います。


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