早稲田・松本教授〜研究不正問題に関して

松本氏個人および早稲田固有の問題もいろいろあるのでしょうが、その辺はひとまずおいて、ここから見える研究業界の問題点を挙げてみましょう。


1.大学および研究機関における予算管理の問題


例えばこちらhttp://shinka3.exblog.jp/4060312などでよく議論されてますね。
研究というどう転ぶか分からない「水モノ」を扱う予算であるのに関わらず、日本の研究予算は非常に柔軟性が乏しいと言われて久しいです。
思いもかけないデータが出たときは、新たな解析のために急な出費(ヒト・モノ)が必要になることもあるでしょう。新たな領域に踏み込めば踏み込むほど、何にお金が必要になるかは分からないものです。それを事前申請どおりに使え、このお金は機材には使ってもいいが院生や研究員の給料にはダメだ、消費材にはいいが機器にはダメ、なんてやってたら効率ガタ落ちです。
ただし、こういう問題はもう2〜30年の間グチられてきたわけで、むしろ研究者コミュニティの政治力の無さこそが問題のような気もします。日本学術会議とやら、生まれ変わったのなら早く動いてください。


2. 国の研究予算配分の問題


例えばこちらhttp://d.hatena.ne.jp/yahara/20060702/1151843710
1.のような理由で、研究者にはできるだけ「予備」のお金を持っておきたいというインセンティブが働きます。
そこにお国の「重点配分」方針がドッキングすると、ごく一部の研究室に「金余り」という事態が生じます。そして余らせると来年の予算に響きますので、なんとか名目をつけて「消費」しようとします。その極端な例が、松本教授のケースというわけです。
リンク先でY教授は国の「選択と集中」方針を批判されていますが、これはそもそも以前の「バラマキ型配分」への批判から生まれた方策です。
どうもこの辺り文部科学省お家芸というか、「詰め込み」と「ゆとり教育」のようなバカバカしさを感じます。あっちがダメならこっち、と、それぞれの方策の意味を深く考えず、形式だけひょいひょいとっかえる。
必要なのは「戦略的集中」「戦略的多様性」なんであって、ただ集中したりバラ撒いたりすればいいわけではない。
そして、そもそも戦略を立てるにはミッションおよびビジョンが必要なのです。日本学術会議とやら、生まれ変わったのなら早く動いてください。

全くもってやれやれですね。