科学者と啓蒙書

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://gaya.jp/media/what_is_science.htm
http://gaya.jp/media/what_is_science.htm
ブックマークより。
まあこの池谷さんという方、メチャクチャ優秀なのは確かなんだけど天然なのか意図的なのか、微妙なイヤミが文章に滲み出るので(リンク先しかり)敵が多いそうな。
僕も氏の著作は立ち読みしたことがありますが、なかなか面白いし、ゲーム脳やケータイサルの人より遥かに水準が高いのは間違いありません。
それに、昨今のサイエンスコミュニケーションブームもありますし、研究者が社会とコミュニケーションをとろうとすること自体は咎められるべきことではないでしょう。
とはいえ、全く問題が無いわけではありません。
まず、「啓蒙書」という言い方。
要は無知蒙昧を啓く、ってなわけですが、科学者だって専門外分野には十分蒙昧なわけです。高度専門化した現代では、誰だって無知な分野がある。啓蒙書、ってな言い方はやめて「自然科学書」くらいにして欲しいものです。
そして。
科学者は科学のプロですけど、科学コミュニケーションや科学論のプロではありません。また、日本ではまだこれらの分野にレビュー機構が存在しないため、科学者は言いっぱなしが許されてしまう。これが一番問題でしょうね。
本当はこういう一般向け書籍に関しても科学者や研究者間で公に議論が起こるべきなんでしょうけど、ゲーム脳だってケータイサル理論だってその分野の専門家はスルーするだけ。ドーキンスとグールドのようにバチバチやりあってくれてこそ、外野は安心して読めるわけです。
個人的には、特に脳科学関係の「啓蒙書」は、「意識」や「能力」を安易に扱うんで結構危険だと思ってます。まあ科学ってのは個々のデリケートな差異を統計で埋めてしまうからこそ威力を発揮するわけで、その正にデリケートな差異自体を扱うことはできないのです。