好きなことは仕事にするな

というアナウンスがマクロ的には今一番有効なんじゃないでしょうかね、結局。
よりによって日本のような均質社会で「好きなことを仕事にしろ」ってのは、マイナスサムゲームに参加しろって言ってるようなもんですよ。村上龍さん。好きなことなんて皆大差ないんだし。
「人生における成功者の定義と条件」ASIN:4140808829したが、流石ゴーン氏は組織人だけあって、「好きだからやる」のではなく「重要だからやる」のだと龍氏を諭していました。ここが一番面白かったな。まあこの本は「成功者」の新定義をせっかく打ち出していながら、出てくるのは旧定義の「成功者」ばかりなんで基本的には拍子抜けでしたが。
日本のように、周囲の価値観に影響されやすい人が多い場合、そもそも「好き」という感覚すら怪しいものです。何かのファンじゃないと落ち着かないからとりあえず何かを「好き」ということにする。その程度の「好き」が成功のエネルギーを生むわけがないし、エネルギーがあったとしても、受け皿は限られています。
仕事に関していえば、「好きなことが向いている仕事である」ことより、「向いている仕事を好きになる」ことのほうがずっと多いでしょう。「強化」のメカニズムからもこれは明らかです。もっとも、「向いている」というのもなかなか難しいんですけどね。少なくとも、「持続可能」であれば「向いている」といえるかな。
ですから初期段階においては、「好きなことを仕事にしろ」というメッセージは危険なわけです。安易な、あるいは持続不可能な「好き」に固執する可能性が非常に高い。これが「夢追いフリーター(院生?)」「やりたいことがない10代20代」を急増させるのです。
ここまでこのメッセージが浸透してしまったからには、やや強い「好きなことは仕事にするな」アナウンスを抗体として打ち込む必要があるのではないでしょうか。考えてみると、宮台氏の最新戦略「仕事と消費以外で自己実現せよ」という話とかなり近いのかもしれません。

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