がんについて

イレッサ
http://giraud.way-nifty.com/lune/2005/01/post_4.html
が話題ですが、はっきり言ってしまいますと、「がん」の特効薬はできないでしょう。もちろん治療薬の開発はムダだとは思いませんが、コレを飲めば一発で直る!といったクスリはがんに関しては原理的に不可能です。
がんの治療薬は現在細胞周期の停止またはアポトーシス誘導、あるいは血管新生阻害といったアプローチが取られています。これらはがん細胞を殺しますが、同時に正常細胞も殺します。従って、がんと本体、どっちが先に死ぬか、といった闘いになり、患者さんは副作用に苦しむのです。
何故バイキンのように抗生物質で一発、にならないか、というのは現在では多くの人がご存知だと思いますが、がんは基本的には「自己」の細胞だからです。免疫系ですらほとんど認識できません。がんを殺す、ということは限りなく自己を殺す、ということに近いわけです。この中で誰かがゾンビに咬まれているが、殺してみないと分からない、といった感じです。
もちろん正常細胞ではないわけですから、わずかながら違いはあります。
これをなんとか見つけてがんだけを殺そう、というのが抗体療法やドラッグデリバリーなわけですが、ここにも大きな壁があります。
増殖のリミッターが一旦外れてしまうと、がん細胞は急激に「進化」を始めてしまうのです。
確かに最初の少数のがん細胞には共通の異常があるでしょう。しかし、そのまま同じ細胞が増え続けるわけではありません。
そもそもがん細胞は、遺伝子の異常な変化をストップするシステムに欠陥が生じて発生します。ということは、非常に変異が起こりやすい状況にあるわけです。それが爆発的に増殖する。
まさに、進化を促進する環境が整っているわけです。従って、ある抗がん剤を使用すれば、その淘汰によってさらに耐性をもったがん細胞が生き残る、ということになります。
従ってがんには早期治療、何よりも予防に勝る対策は無いと断言できます。そしてその後は、変化する段階に応じて様々な治療法を臨機応変に使っていくことが必要です。
個人的には食事やストレスなど生活環境の改善で相当数のがんが予防できると思います。もちろんどんな生活を送るかは個人の自由なのですが、仕事の都合上思うように自分の生活が送れない人は多いでしょう。
抗がん剤に大金を注ぐのもいいですが、ストレスを減らし、自分の身体に合った健康的な生活を送れる社会づくりを目指したほうが、はるかに多くの人命が救われる気がします。