ブッ飛んだ科学者ですね。

「マリス博士の奇想天外な人生」ISBN:4150502900。なんというか、アシモフ中島らもブレンドしたような御人です。
PCRをドライブ中に思い付いたという有名なお話はホントらしい。クスリをキメていたわけではないようですが。プログラミングの繰り返し処理から発想したというのもなるほどもっともらしいですね。個人的には、20塩基そこらのプライマーが長大なゲノム中の相同配列にきちんとくっつく、というあたりが驚きですね。この辺にむしろ発想の跳躍を感じます。
さて、ノーベル賞をフリーパスに、博士はいいたい放題やりたい放題です。このへん中村修二氏も入ってますね。
興味深いのはAIDSのお話。博士によればHIV感染がAIDS発症の必要十分条件であるとは到底言えないらしいのです。そんな論文はない、と。
簡単に検索してみると、例えば

  • ”Epidemiological evidence that HTLV-III is the AIDS agent.”

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=2945735
あたりで件のGallo氏がHIVがAIDSの原因であることを述べています(HTLV-III=HIV-I)。
一方で

  • ”IgG antibodies to HTLV-III associated antigens in patients with AIDS and at risk for AIDS in The Netherlands.”

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=6100824

  • ”Lack of correlation between promiscuity and seropositivity to HTLV-III from a low-incidence area for AIDS.”

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=2985988
こんな論文もあったりして、確かに錯綜していた模様。
まあAIDSというのは飽くまで症状を表す言葉なので、後天的に免疫機能が不能になればなんでもそう言えるわけです。免疫機能というのはとかく複雑なので、確かにHIVがその唯一の原因というわけではないのかもしれませんね。
マルチビタミンが効いたりしたらしいですしhttp://medwave.nikkeibp.co.jp/show/nh/news/317519、いうなれば劇症型A群レンサ球菌感染症のような感じで、HIVの感染に何かの要素が加わることによって初めて激症化する、というメカニズムがあるのかもしれません。
参考:HIVエイズの歴史(簡易版)http://platz.jp/~iroiro/naka00-bin/sono07.html