パンドラの箱がひーらいた

内田樹氏のこのエントリ『階層化=大衆社会の到来』
http://blog.tatsuru.com/archives/000880.php、僕にはかなり意味不明でした。何を問題にしているのかよく分かりません。
大衆社会』。

  • 自分以外のいかなる権威にもみずから訴えかける習慣をもたず
  • ありのままで満足している

えっと。こんなもの、日本はず〜っとそうだったのではないでしょうか。人々が妙な上昇意欲を燻らせ、社会に不満をぶちまけ始めたのはつい最近、バブル崩壊以降のことでしょう。
それまでは何時の時代も、「大衆」は自分なりの満足を設定し、「権威」のことなど大して考えずにやってきました。「階層」だって、実際のところはそう簡単に移動できた時代などなかったのではないでしょうか。ただ単に、高度成長によってパイがでかくなった結果、階層の差が見えにくくなっていただけのような気がします。
じゃあ結局何が問題なのか、ってことですが。
僕は、特にバブル以降に積極的に仕掛けられた「アメリカンドリームシステム」の失敗、そしてそれを継続しようとしていること、こそが問題であると考えています。
バブル崩壊以降、日本は「みんなでコツコツ」路線に変わる、新たな経済牽引システムを求めていました。結果採用されたのが、「アメリカンドリームシステム」だったのではないでしょうか。
つまり、少数でもいい、「スター」を生み出して経済を引っ張らせようじゃないか、って話です。
「スター」には個性が必要なので、個性重視の教育にしよう。また「スター」は確率の問題でもあるので、なるべく多くの人間が「スター」を目指す必要があります。だから、「夢」を目一杯煽りましょう。みんな「夢」を目指せ。「希望」を持て。誰にでもチャンスはある。
その失敗の結果が、現在の状況です。
まず誤算1。「スター」から脱落した者は堅気に戻って普通に働くだろう、と思ったら、そうはならなかった。「夢」を諦めきれない者、「夢」破れて心や経歴に傷を負う者が多発。その分が労働力としては失われたこと。
次に誤算2。せっかく「スター」を煽っても、そもそも多様性の少ない日本社会。住み分けができず、同じような路線での競争ばかり起こり、「スター」の数はあまりに少なく、「敗者」ばかり生んでしまったこと。
そして現在進行形の勘違い。こうなってもまだ、「アメリカンドリームシステム」を駆動させようとしていること。「煽り」が足らないとばかりに、「夢」だの「ベンチャー」に加えて「格差」「階層化」だのとムチ打っていること。
つまり「大衆化」ならぬ「大衆回帰」はこのシステムに対する自然な自衛反応です。こんなシステムに煽られっぱなしではストレスに押しつぶされるだけですからね。苅谷氏のいう「ねじれ」は、一度はこのシステムに煽られた結果として出てきているだけでしょう。
アメリカンドリームシステム」は、「アメリカ」という条件下で機能するものです。移民も含めた、異常ともいえる社会の流動性が可能にしたやり方です。日本じゃムリ。
しかしアレですね〜、結局人を最後に傷つけるのは「希望」というわけですか。パンドラの箱に最後に残っただけのことはあるようですねぇ。。

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20050325
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20050408