科学マジックは諸刃の剣?

最近知人から「小学生に見せる面白い実験ない?」みたいな話を向けられました。
見せて面白いとなると、やはり「科学マジック」的というか、ちょっと不思議に感じるような現象がいいでしょう。
検索してみると、出るわ出るわ
どうやら日本の理科教育振興の主力武器の一つのようです。
まあご多分にもれず私もこういうのは大好きで、子供の頃はウチでいろいろ試行錯誤して台所を汚したもんです。
ただ改めて科学教育という観点から考えてみると、「科学マジック」は必ずしもよい影響ばかりとは限らないような気がしてきました。
科学マジックを教育に使う場合、大まかには

1. 面白い、不思議な現象を見せる
2. ここには実はこんな法則が隠れているのです
3. 科学ってスゴイですね

という流れになると思います。
ところがこれ、よく考えるといわゆる「水伝」の構造とそんなに変わらない。

1. 水に声をかけると物が腐らない
2. 実は水は言葉が分かるのです
3. 水ってスゴイですね

もちろんこの場合1自体が嘘なんですが、その辺りはなんとでも誤魔化せます。世の中には「マジック」もあるわけですし。
つまり1〜3といった流れで「法則」なりなんなりを「刷り込む」やり方をしていると、ちょっとしたトリックでも「科学的」に見えてしまうのです*1
だから科学マジックを使うなと言うわけではありませんが、使い方には十分に注意したほうがよいと思います。
1〜3の段階ではまだ「科学」を教えたことにはならないのです。
ここからさらに突っ込んで、

4. 「マジックのような」現象がうまく起こる条件を比較検討したり
5. それらを総合して「モデル」を抽出し
6. さらにそれをチェックする実験を考える

というところまでいってやっと「科学」に触れたことになる。
もちろん大変な作業です。
が、真に科学教育を行うならこの辺りまでやる必要があると思います*2。現時点では資源が圧倒的に足りないんですけどね。


関連:科学は必ずしも面白くないし、ロマンティックでもない

*1:そういえば「あるある」も見事にこのパターン。

*2:確かにたるいしめんどい。でも科学って本来そういうもんなんです。