老いと死の時代がやってくる
猫を償うに猫をもってせよ - 20年後
こーいうとこを読むと、これから20年、すごい時代になるだろうなぁと感じます。
平均寿命がこれから大幅に伸びることはちょっと考えにくいし、むしろ団塊世代は不摂生とストレスのため平均を下げそうでもあります。
となると、20年後あたりには団塊世代とその上の長寿世代がそれこそどっかんどっかん死に始めることになる。
カネ、権力、文化においてもっとも力を持つ巨大な集団が、真正面から老いと死に向き合わなくてはならなくなる。
これがどういう結果をもたらすのか、ちょっと想像もつきませんね。なにしろ人類初でしょうし。
ITやらWEBがどう関わってくるのか、というのもありますが、個人的に気になるのはバイオテクノロジー。やっぱり、老いや死に対する直接的な武器ですからね。
製薬会社の研究所閉鎖は手法の革命的変化のせい
こういう記事がありますが、実際はちょっと違います。
巨大製薬会社の従来の方法論が行き詰ってきたのは確かなんですが、分子設計法がそこまで台頭しているわけでもありません。確かにゲノム研究の成果によってあるたんぱく質に結合しそうな薬剤を見つけやすくはなりますが、「ある分子に結合する」ということは「他の分子に結合しない」ということではないので、「クスリ」としてはまだまだなんです*1。
で、どう変わりつつあるかというと、大学やバイオベンチャーによってシードが生み出される例が非常に増えてきています。中央集権から自立分散型の開発になっているということですね。多種多様なベンチャーが多種多様な方法論によってブレイクスルーを成し遂げつつある。
etc、etc。
分子設計はその一つに過ぎません。
ネット界隈で「ベンチャー」というとどうしてもIT系になってしまいますが、アメリカでのバイオベンチャーはITに勝るとも劣らない存在感を示しています。
日経BP社・宮田満バイオセンター長の講演メモ
○米国のバイオ業界
・ジェネンテック社*2が、2005年に売上でロッシュの53%の規模になった。
・米国ではバイオセクターの時価総額が、ITセクターの時価総額を超えている。
・ジェネンテックより時価総額が大きいIT企業は、IBMとグーグルのみ。2社より上位は全て製薬メーカー。
・バイオ企業は4500社。600億ドルの収入があり、時価総額は5000億ドル。20万人を雇用。
ところがまあ、日本のバイオベンチャーはお寒い限りで、未だクスリの一つも作れていません。
バイオが多分ITと異なるであろう点は、必要とされる能力の多様性が極めて高いことです。
いわゆる「地頭」系の切れ者ももちろん必要なのですが、「ナマモノ」を扱わなければならない以上、
- 手先が器用な者
- 「緑の手」*3を持つ者
- 観察力のある者
- 粘りに粘れる者
- 直感に優れた者
などなど、非常に人材のレンジが広くなければやっていけません。フィールド系の収集をやっているバイオベンチャーでは、文字通り「探検家」の能力すら必要となります。自然を相手にする土俵では、能力の多様性が求められるのです。
経済的にも社会的にも、バイオ系の進退は今後の「老いと死の時代」で非常にクリティカルになってきます。画期的な治療法や医薬が生まれれば医療費の削減にもなるし、世代間の富の分配にもなる。なにより優れたバイオ商品というのはグローバルな競争力を自動的に持ちますから、日本経済の建て直しにも貢献するでしょう。
ではそれに見合った環境や人材が育っているか。
・・・正直、かなり不安なところです。