人間宇宙論とID論

http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20050814/1123979277
ネタバレ気味になりますが、ちょうどグレッグ・イーガンの「万物理論万物理論 (創元SF文庫)を読んだところだったので。イーガンの「人間宇宙論」と「ID論」って似てるな〜、と。
人間宇宙論の詳細は「万物理論」を読んでいただくとして、ID論との最大の共通点は「論理的には完結している・破綻していない」ってことですね。昔リリカさんとこでも話した記憶がありますが、聖書原理主義は別として、柔軟な創造論は厳密には論破不可能です。「そういうふうに創られた」といえばいいだけですから。
しかし、論理的に完結していることは必ずしも科学的であるとはいえません。科学には再現性はもちろん、反証可能性も必要ですからね。ID論は反証不可能ですので、科学的とはいえません。従って、少なくとも科学の授業で教える事柄ではないですね。「科学的ではないが論理的な考え方」の一つとして教えるなら構いませんが。
(こうしてみると、少し前に議論した秀さんという方は論理的な思考をされる方でしたが、科学的な思考ではなかったのかもしれません。)
ところで上記リンク先の

今では、動物については、すべての動物門がカンブリア紀に出現した可能性があり、しかも現在の所、これらの先祖をさかのぼることが出来ていない。
その意味を考えるというのは重要ではある。

ですが、どってことありません。
環境の激変時には大量絶滅または少数者の大適応放散が起こりますし、その後環境が安定するにつれ各局所的環境において多様性が減ってくるのは当然です。ですから遡る際も変化以前にはたどり着きにくいし、現存の種が大適応放散の時にほとんど生まれていても何の不思議もないわけです。
日本の理系にイマジネーションが足りない、というところには同意。
ちなみに・・。環境の激変はニッチを増やすだけではなく、生物にストレスを与えて突然変異を誘発する、という説もあります。熱や放射線のストレスをかけるとトランスポゾンが活性化するという報告も実際にありますし、地球が急激に温暖化したことでものすごい変異と放散が起こったのかもしれませんね。
参考:カンブリア爆発